福岡高等裁判所 昭和24年(つ)370号 判決 1949年11月22日
被告人
田中益雄
外一名
主文
被告人田中益雄の本件控訴を棄却する。
被告人納富猪六に関する原判決の部分を破棄して之を佐賀地方裁判所に差し戻す。
理由
被告人納富の弁護人古賀俊郞の控訴趣意第一点(一)について。
記録を精査するに、原審公判調書中裁判所書記の署名下の認印及び契印と文字の挿入削除の箇所の認印とが明かに相違していることは眞に所論の通りであるが、その相違は印の大小、形状の点であつて孰れも同調書の作成者である書記平山忍の平山の文字を有することも明かである。
右のような相違事由だけで直ちにその調書を無效とする規定もなく、実質的の理由もなく、その效力の有無は專ら裁判所が諸般の状況を勘考して自由の裁量によつて決すべきである。本件公判調書はその挿入削除の部分を含む全文において同一筆蹟のものと認められるから、同調書は作成者によつて正当に作成された有效のものと解するのが相当である。結局論旨は理由がない。
〔註〕 破棄の理由は事実誤認による。